夫の田舎の家へ

夫が、空き家になった田舎の家の風を通しに行くというので一緒に行ってきた。
車で1時間半以上はかかるので、夫一人で運転させるのはやっぱり心配なんだな。


案の定、すぐに眠たいを連発し、寝てしまった。
今の治験の抗がん剤は相当眠くなるようで、始終眠いと言っている。


せっかく田舎の家に行くのだから、老人ホームのおかあさんのところにも寄っていこうということになった。


夫の田舎の家、義母が今年4月に老人ホームに入り、4ヶ月間誰も生活することなく過ぎた家はおじいさんとおばあさんのにおいがした。


山と川に挟まれた家の窓を全部あけはなすと、ジージーカナカナとひぐらしの声がして、
クーラーをつけなくても涼しかった。


座敷にゴロンと転がって、目をつぶって山からのいろんな音を聞いていたらそのまま二人すやすや寝ていた。


ホームに住む義母に会うと、髪が白くなっていて、以前染めていた黒い部分とマダラになっていた。
ガラス越しの面会の向こうで、


このドアから一歩も先に出られないの。髪も染めに行けないの。
でも私は幸せだ。こうして会いにきてくれる人がいて。
ご飯も食べられるから安心して。
腰が痛いのだけがなんだけど、この歳だからそんなことくらいは当たり前だし。
こうして会いにきてくれて私は幸せ者だ。


と繰り返す。


本当は自分の家ほどいいところはないけれど、最近はどんな家だったか忘れてきてしまった。でもやっぱり家はいいなぁ。
でもこのコロナではいっときも帰ることは無理だから仕方ない。
時々、調子悪い時はあるけれど、頑張ってるよ、頑張ってるからね。安心してください。


と繰り返す。ちょっと本音は漏らしても必ず最後は明るく締めくくる。
ずっと昔から、90の今でも明るく朗らかな人。


ホームから見た風景